アディクション(嗜癖行動)は,誰にでも起こる可能性があるとてもやっかいなものである。気がつかない間にゆっくりと進行し,生活のすべての面に影響をもたらし,治療や予防が非常に難しい。 本書では,薬物摂取による脳や身体への影響や耐性・離脱症状などの生物学的基礎,社会学習モデルと自己制御能力の障害についての理論と研究を紹介し,アディクションについて広範な視点から明瞭にわかりやすく説明する。また著者らは,その行動をより深く理解するために,選択と意思決定に注目し,自動認知プロセスと制御された認知プロセスによる二重システム理論という統合的なフレームワークを提唱する。続く章では,上記の知見から導かれた薬理学的・医学的アプローチ,心理社会的アプローチが述べられ,さらにアディクションを予防することの重要性とともに,さまざまな戦略が示される。 初学者でも読み進めやすいように,各章のはじめに内容の要点を提示し,重要な概念や考え方の傍証として,「科学的に考えよう」というコラムが随所にちりばめられている。また,巻末には専門用語を簡潔に解説した用語集も付されている。