北町奉行所吟味方与力助・鼓晋作は、江戸町会所七分金積立の使途不明金を探索していた。七つの町を取り締まる平名主・逢坂屋孫四郎を横領の疑いで詮議立てする直前に、孫四郎雇いの書役である藤吉が、姿をくらました。さらに藤吉の住家で、惨殺され血塗れの双親と女房の無残な死体が発見され、まだ乳飲み子の姿が消えていた。この一件は、お調べの手が迫り、使い込みの発覚を恐れた藤吉が錯乱し、一家無理心中を謀ったあと、小名木川に身投げしたとして処理され、藤吉ひとりの仕業として一件落着された。だが、事件から十一年後、使途不明金に関わりのあった者らが次々と殺されてゆく。情けと剣の傑作長編時代小説。全面改稿のリニューアル版!