町人風体の男に襲われていた呉服問屋の娘お八重を家まで送りとどけた橘文吾は、主の卯兵衛からお八重が日々の稽古事に出かける際の護衛を頼まれる。聞けば、お八重は旗本の家の養女となるのだと言うが、後に大奥に上がるためだとわかる。執拗にお八重を見張る視線に不審を覚えた文吾は、探索してみようと思い立つ。書き下ろし長編時代小説、渾身の第三弾。