早春の海岸にてバス停に降り立った老夫婦。画家である夫・籐三は妻のことをハルちゃんと少女のように呼ぶ。ふたりは行き先を決めず気ままな旅に出たのだった。旧友と呑み交わし、その孫と語らう心躍る時間。だがふたりの胸には秘められたある想いがあった…。男と女はいかに寄り添い、そしていかに死を迎えるのか?さまざまないのちの繋がりを見つめ直す旅。こんな余生をおくりたいと思わせる、穏やかに満ちてくる日々をやすらかに描いた灰谷文学の結晶。現代人を癒す至福の贈り物。