本に生命を吹き込む「装丁」という仕事。
その過程から紡ぎ出される
「装丁」論および「出版文化」論。
「本」をめぐる真摯なる問い。
「理想の装丁とは何か」を徹底的に考える。
「装丁家」と名乗っても、まず何の仕事か
理解してもらえない。
「ブックデザイナー」と言いかえると
少しは通じるけれど、今度は
「本のデザインって、いったい何をデザインするんですか」
と訊ねられる。
かみさんは、わたしがこの仕事をするまで
「装丁」という職能を知らなかった。
「じゃ、本の《顔》と《姿かたち》を、
誰が考え出すんだい」と訊ねたら、
「そんなの自然に出来ると思っていた」と返されて絶句した。
だが、言われてみると、いっさいの作為を感じさせず、
自ずから生じたように映る装丁こそ、理想の装丁かも知れない。
(『図書』2014年11月号)