故郷の記憶。それは、甘美な記憶であり、郷愁をさそうが、同時に傷ましい記憶でもある。都市空間のなかで展開される、故郷の記憶をめぐるドラマが、故郷の数だけ、いやひとの数だけ展開される。なぜにひとは故郷にこだわり、故郷を論ずるのか。一九世紀後半、故郷をあとにした青年たちの都市体験からつむぎ出される、記憶と空間の文化史。