本書を『他者へのまなざし-異文化理解のための比較文化論』と題したのは、ケピング教授の学問的方法論や比較文化に関する問題意識の中に、「自分の中の他者」と「他者の中の自分」というような緊張関係があるからである。また、「他者を理解しようとする中にこそ、自分自身を再発見する契機がある」という確信がある。したがって、「他者へのまなざし」は両義的で、その中に「自分自身へのまなざし」として自文化への自己反省を伴っており、「異文化理解」に関わる学的反省性においては常に「比較文化論」となるはずである。そして、彼自身の「他者へのまなざし」は共感に満ちた温かいまなざしである。