国際協力専門員。あまり聞き慣れない名称かもしれない。国際協力機構(JICA)が世界各地で展開している国際協力の技術部門の具体的な活動を専門職とする者たちの呼称である。その数、約九〇名。それぞれが専門の分野を持ち、JICAという組織の中で国際協力の職人集団を形成している。本書に参加した一二名の専門分野は、参加型開発、農業・農村開発、開発行政、地方電化、ジェンダーと開発、環境行政、上水道開発、情報通信技術、感染症対策、人的資源開発、森林開発、そして防災・水資源開発と多彩である。そこで本書では、途上国が抱えるこれらさまざまな課題を、各章ごとに一つひとつ浮かび上がらせながら等身大の途上国の姿を描いてみることにした。これによってそれぞれの分野ならではの課題やアプローチのあり方を浮き彫りにし、「国際協力の仕事」をする上で必要とされる根本的な姿勢・考え方・視点というものの総体を示すことができればと考えたからである。