「わたしは-お父さんが開発した、最後の歌詞入力型シンセサイザーです」錆びついた黄色い廃車の中で、彼女は歌うように言った-。海上都市で作曲家を目指す春希は、"死の六連符"という怪死現象に魅入られていた。恐怖が、空白の未来が、春希を緩やかな絶望に浸らせていく。そんなある日。彼は廃棄物処理場で、"処分"を待っていた少女と出会った。彼女は、自らを次世代型電子楽器で、人間ではないという。とまどう春希。こうして不思議な機械少女・伽音と春希の最後の冬は始まったのだ。「…こんなにも温かい…」伽音の温もりと、彼女が"奏でる"天上の歌声に包まれ、春希の中で少しずつ何かが変わっていく。だが、穏やかな時間は長くは続かなかった。伽音が何者かに連れ去られたのだ。いったいなぜ?彼女は"何者"なのか?春希は、"伽音"に刻まれた謎へと迫っていく!第4回富士見ヤングミステリー大賞佳作のロマンティック・ミステリー。