急速に進展した分子レベル、遺伝子レベルの研究は、従来の血管像をあざやかに描き変えた。全身の細胞と情報をやりとりし、相互に影響をおよぼしあいながら能動的にふるまう、「考える」システムとしての姿が見えてきたのである。収縮しなければならないときは自ら収縮物質を生成する。肝臓などの臓器とは互いの存在に重要な因子を出して支えあう。さらには、がん、高血圧症、心臓疾患など、重い病気に重要な役割を果たすことが判明し、血管への注目度は日々高まっている。ノーベル賞学者が予言した「動脈硬化を進める遺伝子」の発見者が、最新の知見を引っ提げ、知られざる血管の実像をヴィヴィッドに語る。