馬喰町の呉服店・伊勢屋で盗っ人が捕まった。やけに冷静な番頭に案内された同心・野火陣内は、十人もの盗賊団を店の者が一網打尽にしたと知り驚く。奉公人に化けた引込役を潜り込ませ、周到に事に及んだ一味だが、相手が悪かった。伊勢屋は警備万全、蔵に落とし穴まで掘る抜かりのなさだったのだ。だが一難去ってまた一難。捕らえた引込役から「同じように店を探る何者かがいた」と聞いた陣内。一筋縄ではいかぬ事件の予感に、娘の茜を女中として送り込み、大店に隠れた悪を焙り出すことに-(「第一話 大鴉」より)。型破りな同心が活躍する痛快時代小説、待望の第九弾!