スタンダード・エコノミックス、なかんずく新古典派ミクロ経済学の本質が「選択」、各経済主体の意思決定にあることはあまねく認められている。経済学の主要な意思決定理論にはそれぞれ肯定派と否定派が激しく鍔迫合する焦点というものがある。それが時間選好率の定常性であり、主観的確率の加法性であり、ローレンツ曲線の交錯性なのである。本書では経済心理学、社会統計学や医療経済学の最近の成果を積極的に摂め取ることによって、意思決定理論が本当に現実妥当性を兼ね備えているものかどうか、修正を余儀なくされているならばどのように発展させていけば良いものかを検討する。