わたしは、だれかの命をもらって生きている、生かされている。 そう気づいたとき、人はもっとやさしくなれる。 他者にも、大地にも、自分自身にも──。 先住民族アイヌの深い知恵に学ぶ、命と魂の物語。
お父さんが狩りから帰ってくると、ふところには小さな子熊がいた──。 男の子は、子熊と一緒に食事をし、相撲を取り、川で遊び家族のように暮らした。 子熊が大きくなってきたある日、お父さんが言った。 「そろそろ、この子をカムイの国へ送ってさしあげよう」
子熊を数年育てた後に屠殺する儀式「イオマンテ」。 そこには自然に対する感謝や畏敬の念が強くこめられています。 アイヌが長年大切にしてきた知恵に学ぶ、命にまつわる物語です。
※本書は2003年にパロル舎より刊行された『イオマンテ』を一部加筆修正し、新装にしたものです。