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  • Author橘真
  • Publisherブリコルール・パブリッシング
  • ISBN9784990880125
  • Publish Date2017年6月

哲学するレストラトゥール / 自給自足の有機農業で実践する「贈与への責務と返礼」

神戸の名ソムリエが淡路島に移住して実践する、有機農業による自給自足。
オルタナティヴな営みの実践を通して導く、ラディカルな手づくりの哲学と思想のカタチ。
 かつての神戸を代表する伝説的なフランス料理の名門として一時代を画した[レストラン・ジャン・ムーラン]のソムリエを経て、闊達でフレンドリーな店として人気を博したワインバー「ジャック・メイヨール」の店主であった著者の橘 真さんは、その後、フランス・イタリアのワインや野菜の生産地を視察研修の後、ワインの輸入卸業務店を経て、2009年に淡路島に移住。自らの思考と哲学を実践すべく、有機野菜の栽培、平飼いの養鶏による飼料の自給、罠と銃による狩猟などを行いつつ、淡路島内外のレストランに野菜などの直接販売を手掛けており、将来的には葡萄の自家栽培による有機ワインの醸造を目指しています。
 都市的生活から一転、地方の中山間地に移り住み、「有機農業による自給自足」という、等価交換的価値観が蔓延する現代日本におけるオルタナティヴを選択し、自らの農業を「自然からの贈与に対する責務と返礼」と考えるその暮らしのカタチには、これから縮小していくのが既定路線であるこの国で生きるための知恵が隠されているように思います。
 農業に興味を持ち地方へと移住する若者が増えつつある今、現代の日本社会の歪み、農業や地方が抱える問題と向き合いながら、農業や私たちの食、共同体、自我と隣人、人間存在や生きていくことの本質を、レヴィ=ストロースや網野善彦、オルテガなどの古今東西の知の巨人の思想にも言及しつつ、掘り下げて述懐します。
 無償の贈与に対する責務の返礼を負ったレストラトゥール(レストランの職人)としての矜持を胸に、1人の農業家が自らの実践を通して導く、ラディカルな手づくりの哲学と思想がここにあります。
内田樹先生(思想家・武道家)のご推薦文より
「僕が「行きつけのバー」というようなものにお店の人とおしゃべりをするためだけに足繁く通ったのは、
 後にも先にも橘さんのお店だけである。それくらいに橘さんの話は面白かった」
「橘さんはいったいどんな文章を書いてきたのだろうとわくわくして頁をめくった。
 そして、何頁か読んで、うれしくなってきた。バーのカウンター越しにおしゃべりしていたときの口調と同じなのである」
「その文体は、その語り口と同じように、自由である。そのときに頭に浮かんだアイディアの尻尾をどこまでも追いかける。
 捕虫網を持った少年が真っ黒な足を激しく動かしながら、田んぼを突っ切り、小川を飛び越え、森の中を走り回っているのと同じである。
 ここに記されているのは、その「足跡」である」

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