月が満ちることのない地ベル・エイドのLは、敵方ハラの捕虜となっていた。Lは敵兵に語り聞かせる、ハラの友人ファルドと過ごした森と草原の日々のことを…。学校は閉鎖され、家族を喪くし、少年は兵士になった。素朴で満ち足りた暮らしが大きなものに覆されていく。そのさまをつぶさに苛烈に描き、話題を呼んだ朝日新聞連載の表題作。対となる中編「Kの欠片」を加えて編む。