建築の話はわかりにくいという好ましくない定評があるが、本書もまたこの定評をやぶることはできそうもない。勝手な言い分かもしれないが、できることなら、本書を建築の書と考えていただかない方がよい。それでは何について書いているのかと問われれば、その答も難しい。私としては、空間的体験についてのわずかばかりの考察をまとめたのではないかと考えている。