精神科病棟を完全閉鎖した北海道浦河町に何が起こったのか?
退院促進から地域生活移行に取り組んだ浦河の衝撃と軌跡は、入院治療中心から地域生活中心を実現しようとする精神医療を主導してきた。そして同時に日本の各地域では、ユニークの構造改革が次々に産声を上げつつある。病棟に頼らない/頼れないという事実は、決してネガティブな悲劇をもたらすものではなかった。精神障害を抱えながら地域で生きていく人々の力を育み、やがて旧来の精神医療システムに抜本的な変革をもたらすだろう。
浦河赤十字病院から浦河ひがし町診療所に舞台を移した川村敏明と、メンタルヘルス診療所しっぽふぁーれにおいて訪問医療を志向する伊藤順一郎による2つの対話。生活・仲間・就労のサポート、障害とともにある家族のケア。薬物療法、身体ケア、アウトリーチ、ケースマネジメント、リスクアセスメント、ピアワークなど多様化するサービス。国内外の調査研究、浦河をはじめとする地域の現状のレポート、そしてスタッフや市民との関係構築――「住む=生きる」のケア、「家族=環境」のサポート、「ケア=サービス」の充実、「地域」の創生、そして「人材」の育成という5つの領域にフォーカスし、人々によるグラスルーツの実践と経験を集積しながら、地域精神医療が目指すべきルートを探る。
医療者・当事者・家族の挑戦と実践知が結集された、来たるべき地域精神医療を理解するための必携ガイド。