1619年の冬。23歳のフランス人、ルネ・デカルトは夢を見た。数学によって統一された世界、あらゆる知的活動が論理的演算によって処理できる世界を夢見たのだ。デカルトの夢はいまや新たな活力(コンピュータ)を得て、誰も思いもかけなかった勢いでこの世界を変えつつある。コンピュータは私たちの生活の向上に役だっているのだろうか。それとも、コンピュータへの依存度が高まるにつれて、私たちの暮らしは脆弱になっているのだろうか。数学とコンピュータは私たちの知的活動や感情にどんな影響を及ぼしつつあるのだろうか。いまこそこうした問題意識を持たねばならない。この問題意識を高めることが、本書の最大の目的である。