「なんとさびしい句だろう、美しい句だろう」――小池昌代一処一情――好みの場所を見つけて眼を据え、迸る感情を凝集させる。生涯の師・山口誓子は愛弟子の句作りをそう評した。 「いなびかり北よりすれば北をみる」 「雪はげし抱かれて息のつまりしこと」女心と物語性に満ちた句で、戦後俳壇の女流スターと称された多佳子。その全句を眺めるとき、生をみつめる厳しい眼差しと天賦の感性に圧倒される。補遺、自句自解、索引、誓子による解説を付す貴重な全句集。エッセイ・小池昌代