明治初年、久米邦武がそこに近代文明の象徴を見出し、夏目漱石が近代社会における人間関係のあり方を悟った駅というものは、日本の近代化の本質をよく表わしている。駅は人が集まり、人が散っていく結節点であって、次の行動への「幕間」ともいえる。明治5年の鉄道開通にはじまり、大衆化現象を先取りしつつ変貌してきた駅も敗戦で一頓挫し、戦後は新しい展開をとげている。駅の変遷を辿って、日本近代化の特質を明らかにする。