貴君、僕は大阪へ行って来ようと思う――。一九五〇年秋、この一言から汽車に乗りたかった内田百間の『阿房列車』シリーズは始まった。以後、五年間にわたる全行程に同行した〈ヒマラヤ山系〉こと元国鉄職員の著者。百鬼園の旅と日常を豊富なエピソードを交えつつ綴った好エッセイ。解説・酒井順子