「そんなことは業者に任せ、その時間で音楽を作ってくれ」この本を読んだファンはそう思うであろう。しかし心配は無用。この迂回、屈曲こそが音楽の、いやそれのみならず文学の、いやそれのみならず人生の本然なのである。 ――町田康氏
アジカン・ゴッチの音楽スタジオ「コールド・ブレイン・スタジオ」。 その空間で日夜起こる、脳みそが凍るほどに理不尽でおかしな出来事と事件。
様々な青年的な葛藤を経て、経て、経て、皮を剥いてヘタを取って、中から出てきた中年男性を鍋に入れて煮、冷蔵庫で粗熱を取ってから冷凍し、しばらくしてから取り出して皿に盛り付けたのがコールド・ブレイン・スタジオであり、本書である。とか言うと、わけがわからないかもしれない。が、この本はれっきとした音楽書であり、スタジオ作りにまつわる冒険譚でもある。とかなんとか言いながら、俺は今日もまたスタジオの音響について悩んでいる。――「あとがき」より