藩の命運をかけ、少年は舞った。荒涼たる土地に生まれた十五歳が、芸によって?んだ一筋の光。土地も金も水も米もない、ないない尽くしの藤戸藩に、道具役(能役者)の長男として生まれた屋島剛は、幼くして母を亡くし、嫡子としての居場処も失った。以来、三つ齢上の友・岩船保の手を借りながら独修で能に励んできたが、保が切腹を命じられた。さらに、藩主が急死し、剛が身代わりとして立てられることに、そこには、保の言葉と、藩のある事情があった――。直木賞作家の新たなる代表作!