第三エッセイ集。匂いや兆しなど、ニュアンスに対する著者のアンテナ感覚が生んだ文章は、これまで同様、多方向にわたる-いじめについて、本について、色について、記憶について、その後の阪神大震災について、PTSDについて、ヴァレリー詩の秘められた構造について、創造と癒し序説など、長短32篇と詩6篇を収録。巻末の「ロールシャッハ・カードの美学と流れ」は、ホームズ=ギンズブルグばりの推理を重ねたみごとな謎ときである。