第二次世界大戦にまつわる被害の記憶とどのように向き合うのか?
第二次世界大戦末期、大規模な避難と逃亡から、報復感情による無差別な追放、戦後の暴力的な強制移住、秩序だった移動の50年代まで、ドイツ系住民の「追放」と統合が、戦後欧州の地域秩序の再編、ドイツ社会の再編においていかに大きな課題となったのか? 本書は「追放」の構想・執行・統合・記憶形成という四局面で議論を組み上げ、世界史的な位置づけを試みる。また、「同質性だけに頼らない統合と連帯の形」の模索も訴える。
「追放」がナチ時代の加害と結びつく形で相対化され、共時的な他国の経験と比較されることによっても相対化される――これは、戦争と戦後処理に関わる自国中心的な歴史観を見直す作業といえる。ドイツにおけるこの間の議論の進展は、戦争の過去とその時代の体験を今日に生きる私たちがいかに位置づけるべきかをめぐって今も議論が続く日本にあっては、考えさせられるところが多い、と著者は本書の意義を説く。
著者はドイツ現代史専攻の中央大学教授で、著書『ドイツの歴史教育』、訳書カーショー『ヒトラー(上)1889-1936 傲慢』がある。巻末に「人名・事項索引」「注」「史料・文献リスト」を付す。