北海道・利尻島に美しくそびえる利尻富士で、不審死したひとりのエリート社員。
警視庁刑事局長の兄・陽一郎から調査を頼まれた浅見光彦は、ある女性から
託された謎のメッセージとCDから事件の真相に迫ってゆく。
次第に見えてくるのは、防衛庁という巨大組織に生きる人々の苦悩と正義、恐ろしさ。
警視庁を背負うエリートである兄・陽一郎は光彦とともに
「彼らの正義」を動かすことができるのか――
個人の正義と国家犯罪がぶつかるシーンの緊迫感、家庭と恋人を大切にしていた
男の無念の死を思い、「大義」を真摯に論じる浅見光彦の必死の姿は感動を呼ぶ。
官僚組織の複雑怪奇さ、エリートたちの強固さ、北朝鮮ミサイル。
日本人にとっての「覚悟」とは何か。
軽やかな人間ドラマと謎を追ううち、この現代社会を背景に生きる全ての
読者に壮大な感慨を呼び起こしてくれる、内田康夫堂々の代表作。