「この事典はね。見るたびに中身が変わってゆくのだよ」クラフト・エヴィング商会の先代吉田伝次郎がそう言い残した書物「アゾット事典」。孫である三代目が、書棚の隅から、この不思議な書物を見つけてきた。遊星オペラ劇場、星屑膏薬、夕方だけに走る小さな列車、エコー・ハンティング、ガルガンチュワの涙という蒸留酒、雲母でできた本、忘却事象閲覧塔…。茫洋とした霧のなかにあるかのような懐かしい場所アゾットの、永遠に未完の事典。
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