70年代以降に英国で生まれた移民2世・3世の著名なクリエイター21人が、自己存在の意味や葛藤、社会の偏見などを繊細かつ巧みに表現し、大きな反響を呼んだ話題の書が日本語版で登場。J・K・ローリング推薦。
★日本語版推薦
移民のひとたちは”よい移民”、つまりモデル・マイノリティでなければならないのだろうか。求められている役割を演じなければ”悪い移民”なのか? 人種も境遇もさまざまな本音の声たちに耳を傾けながら、考え込んでしまっていた。受け入れるとはどういうことか。アジア人であるとはどういうことか。どちらの立場からしても、わたしたちは当事者だ。
――谷崎由依(作家、翻訳家)
多様なルーツを持つ人々が暮らすイギリスという国。その日常に深く深く染み込んだ無知と差別、そしていつまでも逃れられない葛藤と戸惑い。「黒人」であることで何かを期待される。「東アジア人」であることで何かを期待される。メディアの上ではステレオタイプが繰り返され、おなじみの「悪いイメージ」を払拭するために「よい移民」として振る舞おうとする子どもたちがいる。なぜ無色透明であることは「白人」だけに許された特権なのか。イギリスで「インド系」であること、「中国系」として生きることは一体何を意味するのか。『よい移民』に収められた21の言葉は、「都合の“よい移民”」に対する既存の安直なイメージを裏切るだろう。突飛な何かが書かれている、ということではない。21人の「移民」たちが描いた日常と感情の揺れ動きが、社会の根っこにある嫌なもの、緊張感、哀しみを驚くほど鮮明に炙り出している。
――望月優大(ライター/ニッポン複雑紀行編集長)
★主な目次
編者まえがき
ナマステ(ニケシュ・シュクラ)
黒人になるためのガイド(ヴァレイッゾ)
私の名前は私の名前 (シメーヌ・スレイマン)
黄色 (ヴェラ・チョック)
ケンドー・ナガサキと私(ダニエル・ヨーク・ロー)
機会の窓 (ハイムシュ・パテル)
ニシュ・クマールは困惑するイスラム教徒か?(ニシュ・クマール)
テレビに映る黒人像と自分なりの「黒さ」 (レニ・エド=ロッジ)
「よい」移民を越えて(ウェイ・ミン・カム)
「そんなのだめだよ! お話は白人についてじゃないと」(ダレン・チェティ)
帰郷の途について(キエラン・イェイツ)
国旗(ココ・カーン)
アフリカに切り込む――黒人向けの床屋と男の話(イヌア・エラムス)
どこから来たか、どこで着ているか――移民と英国ファッション(サブリナ・マフーズ)
空港とオーディション(リズ・アーメッド)
カースト主義の永続(サラ・サヒム)
シェード(サリーナ・ゴッデン)
テロリストの妻(ミス・L)
トークニズムについて我々が語るときに語ること(ビム・アドワンミ)
死は多頭の怪物(ヴィナイ・パテル)
感謝知らずの国(ムサ・オクウォンガ)
訳者あとがき