自分のふるさとの言葉でふるさとの仲間にイエス・キリストの福音を語りたい。子供の頃からの夢をわたしはいま実行に移します。 私は岩手県気仙(けせん)地方に育ちました。この地方ではイエスはヤソと呼ばれています。その教えは江戸時代にはキリシタン邪宗門として忌み嫌われ、第二次世界大戦終結までは国賊として警戒されました。私はそような雰囲気の中で育ち、そのためにつらい目にも遭いました。でも、それはわたしの大好きなふるさとの人々が、ヤソのすばらしさも、彼の魅力も知らないからです。 わたしはふるさとの仲間にわたしの敬愛するヤソのことを伝えたいと心から願ってきました。でも、かれのことを書いた書物「聖書」は、われわれからは遠く離れた東京の言葉、標準語で書いてあります。われわれはこれを読んで、頭ではひととおりの理解はできますが、残念ながら、それは腹の奥まではとどきません。 われわれ気仙衆にとってケセン語(気仙地方のことば)こそが、ヤソの言葉をわれわれの腹の奥までも響かせる力強いことばです。なんとかしてわれわれのことばに聖書を翻訳したい。これがわたしの幼いころからの夢でした。(序より抜粋)