15歳のとき、両親が本当の両親ではないと知らされた素子。兄の藤一とも血が繋がっていないと知ったそのときから、素子は藤一に恋心を抱くようになる(「秘密」)。
8年前に夫を亡くした率子は、夫の仕事仲間だった小山と再会し関係を深める。率子の自宅の客間を間借りしている女子大生の清子とあけみ、そして娘の百合、幼馴染の光子。賑やかな生活を送る中で、小山との関係はどのような進展を見せるのか―(「体温」)。
心地好い温かさに包まれていたはずが、いつのまにか孤独や哀しさの方に針が振れ、心に引っ掻き傷を残す。歴代最多の六度芥川賞候補にあがった著者の、成就しない大人の恋愛小説集を復刊。
「体温」「秘密」「単身者たち」の3作品を収録。