もようには、さまざまなゆらいがある
水玉、しましま、格子……私たちの生活のいたるところで見かける“もよう”にはそれぞれなまえがついていて、その背景には実にさまざまな物語やメッセージが隠されています。野瀬奈津子さんの体験から生まれた新たな気づきに富んだ文章と、はっと目に飛びこんでくるビビッドでモダンな千海博美さんの絵で、そんな「もようのゆらい」をご紹介します。
多くのもようは「めでたさ」を表現したもの、「季節」を象徴するもの、「願い」をこめたものに分けられます。一見、いかにも日本らしいと思えるもようでも、実は世界共通だったり、はるか遠い国や時代に起源をもっていたり、なかには日本独自の解釈で意味づけられたものも。それらは茶道具をはじめとした美術品、あるいは日常の道具に繰り返し描かれ、いわば一種の暗号のように機能し、言葉では伝えきれない、あるいは伝わらない思いをそこに託してきました。なかには、何気なくつかっていたもように知らなかった意味や物語が潜んでいるかもしれません。もし、送り手、受け手の双方が、もようにこめられたメッセージを言葉を介さずに読み解けたらば、なんとも粋なやりとりになるに違いありません。ゆらいを知ることは、その背後にあるメッセージを読み解くことでもあるのです。
私たちの周りにあるたくさんのもようには、呼び名があって、ゆらいがある。その季節や背景、意味を知ることで、自分らしい解釈で、今まで以上にもようを楽しめるはずです。
<本書で紹介する“もようのゆらい”一覧>
【1:草木】青楓・紅葉/葦/梅/梶の葉/唐草/菊/桐/笹/早蕨/四君子/水仙/莨の葉/木賊/葡萄/芙蓉手/牡丹/松/麦藁手
【2:人・いきもの】荒磯/鱗/唐子/雁/蝙蝠/獅子・唐獅子/千鳥/蝶/鶴/虎/南蛮人/花喰鳥/鳳凰/布袋
【3:道具】網/糸目/鉋目/御所車/独楽/注連縄/扇面/宝尽/壺々/鳴子/熨斗/檜垣/瓔珞
【4:造形】屈輪/源氏香/暦手/紗綾形/七宝
【5:情景・物語】三番叟/都をどり/八橋/柳橋
【6:自然・風景】秋草/渦/雲堂手/山水文/塩釜/竜田川/波/花筏/吹寄/蓬莱山/松島/水/武蔵野/虫喰/雪
【付録:色・ニュアンス】染付/絞手/色絵/赤絵/青磁/鉄絵/織部/三彩/竹/木と漆
*そのほか、本書のつかい方、さくいん(Index)、キーワード解説も。
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好評既刊『かたちのなまえ』(同社刊行)
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