『蛇を踏む』『神様』『溺レる』『センセイの鞄』『真鶴』『水声』──
現代日本文学の最前線を牽引する傑作群を次々に発表し続ける作家・川上弘美が、8年の年月をかけて丹精こめてつくりあげた、不穏で、温かな場所。
どこにでもあるようで、どこにもない、〈このあたり〉へようこそ。
そこは〈このあたり〉と呼ばれる「町」。
そこには、大統領もいて、小学校も、公民館も、地下シェルターもNHKもある。
朝7時半から夜11時までずっと開店しているが、
町の誰も行くことのない「スナック愛」、
六人家族ばかりが住む六人団地の呪い、
どうしても銅像になりたかった小学生。
どこにでもありそうな懐かしい場所なのに、
この世のどこよりも果てしなく遠い。
〈このあたり〉をめぐる26の物語は、どれも短いのに、ものすごく長い。
「この本にはひみつが多い。
そんな気がする。」 ──作家・古川日出男(解説より)
近藤聡乃さんの挿絵に彩られたこの物語を読み終えるとき、
全身が奇妙な感動に包まれる。