心と躰の奥底に潜む官能、甘美な戦慄-。愛らしい孫娘の脣に思わず魅入られてしまう初老の女の心の揺れを捉え、デビュー作『幼児狩り』以来のテーマの見事な結実と絶賛された『赤い脣』、耳の奥よりもっと遠いところから「大統領が死んだ…」という囁きを聴いた女の行動がスリリングな『大統領の死』、高齢ながら豊かな黒髪を誇る父娘の秘密を問わず語りする『黒い髪』、「今日は何だか、皆ともお別れのような気がするんでね」-自分の死を予告する老人とその家族の日常を描く『来迎の日』など七篇。