小畑洋助、12歳。海洋生物学者の父・徹郎とふたり、フィジー諸島はパゴパゴ島に移り住んですでに3年になる。洋助はある朝、ジェットスキーを駆っての通学の途中、珊瑚礁の潮だまりにひとつの生命を発見した。それは、今から6500万年前にこの世に生を食んでいたプレシオザウルス、その末裔だった。そしてその奇跡の生命は洋助の侘む前で両眼を瞠き、やがて歓声の産声をあげた。洋助はこの瞬間からクーの母親となった。しかし平和な日々は長くはなかった。クーの存在そのものが、フランスの核実験実施の鍵となるとは誰が想像しただろう。洋助と徹郎は、フランス諜報機関SDECEの襲撃を前に、銃をとった。クーのために。友情のために。愛のために。文壇を猛攻する気鋭が贈る、渾身の海洋冒険ファンタジー。