記事紹介 ■研究会「事実認定と立証活動」12・完 民事事実認定の現在と展望/馬橋隆紀・須藤典明・村田 渉・加藤新太郎(司会) ■さいたま民事実務研究会 尋問について(2)/佐藤公美・櫻井 進・青山隆治・横山佳純 ◆続・最近の裁判例から見た慰謝料額/後藤 勇 ■判例展望民事法37 告知義務違反をめぐる裁判例と問題点/志村由貴 ■山形地裁民事実務研究5 債権者代位権の行使と,その被代位債権に対する差押え・転付命令の優劣 大阪高判平18.12.13判時1984号39頁(第一審:京都地判平18.6.2判例集未登載)/南雲大輔 ■現代企業法研究会 企業間提携契約の法的諸問題2 パートナリングによる企業間提携 ——リスク分配からリスク共有へ/笠井 修 ■世界の司法121—その実像を見つめて イギリスにおける刑事訴訟手続上の過誤を是正する制度について Criminal Cases Review Commissionの紹介/小川 暁 ■世界の司法122 ドイツ刑事裁判における合意の実情/赤松亨太 ■ブック・レビュー 木谷明編著『刑事事実認定の基本問題』/小林 充 判例紹介(全19件) ◆最高裁判例 [民 法] 1(最高裁第二小法廷平20.1.18判決) 1 第1の基本契約に基づく継続的な金銭の貸付けに対する利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金を,その後に締結された第2の基本契約に基づく継続的な金銭の貸付けに係る債務に充当することの可否 2 第1の基本契約に基づく継続的な金銭の貸付けに対する利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金を,その後に締結された第2の基本契約に基づく継続的な金銭の貸付けに係る債務に充当する旨の合意が存在すると解すべき場合 2(最高裁第一小法廷平20.1.24判決) 受遺者から民法1041条1項の規定による価額弁償の意思表示を受けた遺留分権利者が受遺者に対し価額弁償を請求する旨の意思表示をした場合において,当該遺留分権利者が遺贈の目的物について価額弁償請求権を確定的に取得する時期 ◆行政裁判例 [行政法一般] 1(東京地裁平18.6.16判決) 市街地再開発組合が定めた権利変換計画により権利変換の効力が生じているとして,組合の組合員に対する土地の明渡請求などが認められた事例 [行政争訟法] 2西大阪延伸線工事施行認可取消訴訟(控訴審)(大阪高裁平19.10.25判決) 軌道新設についての国土交通大臣の鉄道施設工事施行認可に違法な点は認められないとされた事例 [国家補償法] 3(東京高裁平19.2.14判決) 教育委員会の職員が公立中学校の教員に関して作成された文書を都議会議員らに提供した行為により同教員のプライバシーを侵害する不法行為が成立するとされた事例 4(東京地裁平18.2.20判決) 逮捕直後に弁護人となろうとする者から被疑者との初回の接見の申出を受けた司法警察員が接見の日時を翌日に指定したことが国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たるとされた事例 [租税法] 5(東京地裁平19.8.23判決) 親族から土地の持分を買った者に対し,税務署長が,当該購入代金額は相続税法7条の規定する「著しく低い価額」の対価であるから時価との差額に相当する金額は贈与により取得したものとみなされるとして贈与税の課税処分をしたが,当該代金額は相続税評価額と同額で時価の約78%であるから「著しく低い価額」の対価には当たらないとして上記処分が取り消された事例 6(東京地裁平18.10.27判決) 1 入湯税の特別徴収義務者が入湯客から徴収する入湯税相当額と「課税資産の譲渡等の対価の額」(消費税法28条1項本文) 2 入湯税の特別徴収義務者が入湯客から徴収する入湯税相当額について,当事者の合理的意思を考慮すれば,その譲渡に係る当事者間で授受することとした取引価額と入湯税とを区別していたものと認められ「課税資産の譲渡等の対価の額」(消費税法28条1項本文)には含まれないとされた事例 [地方自治法] 7(東京高裁平19.3.28判決) 市職員を土地区画整理組合に派遣し,給与を支出したことが地方公務員法30条,35条,地方自治法204条の2,公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律2条,6条に違反しないとされた事例 [情報公開] 8(東京高裁平19.6.6判決) 学校用地の貸主,PTA活動への出席者及び講演会における講師の各氏名が個人情報に当たるとして非公開決定が維持された事例 ◆労働裁判例 [個別的労働関係] 1(名古屋地裁平17.12.16判決) 高校教諭から事務職員への職務変更がなされたとは認められないとして,校務を分掌せずに給与カットしたなどの措置につき,高校教諭の地位にあることの確認と債務不履行に基づく損害賠償が認められた事例 [集団的労働関係] 2(東京高裁平19.10.4判決) 住友重機不当労働行為訴訟控訴審判決 都労働委員会の発した救済命令に対する労働者側の再審査申立てについて中央労働委員会の再審査命令が発された場合において会社側の原救済命令取消しの訴えの利益が失われないとされた事例 ◆民・商事裁判例 [民 法] 1(東京高裁平18.5.23判決) ゴルフ会員権を購入するための銀行融資契約について会員権売買契約がゴルフ場開設の遅延を理由に解除されたことを理由とする抗弁権の接続は認められないが,未払利息等の請求は信義則上許されないとされた事例 2(東京高裁平19.8.28判決) ウェブサイトに送信した個人情報がホームページの制作・保守業務を受託した者の過失により流出したことについてホームページの開設者に使用者責任があるとされた事例 3(静岡地裁沼津支部平19.3.13判決) 「崩壊したごみリサイクル 御殿場RDF処理の実態」と題する書籍の著作・出版について前御殿場市長の名誉を毀損する不法行為が成立しないとされた事例 4(東京高裁平19.10.18判決) 脳動脈りゅうを有する患者にコイルそく栓術を実施したところ同患者が脳こうそくにより死亡した事故について医師に説明義務違反があるとされた事例 [民事訴訟法] 5(東京地裁平19.1.26判決) 1 本件年金基金は被告の他の財産から分離独立して管理運用され,運営のための組織を有しているとは認められず,権利能力なき財団としての要件を備えているものとは認められない 2 本件改定が行われた当時,被告が本件改定前の本件年金規則に基づく年金債務の履行を続けることが困難であり,あるいは困難な状況にあったとは認められず,受給権者において年金支給額を減額することを承諾していたと解することはできないから,本件改定は,これを承諾していない原告らに対しては効力を有しない ◆刑事裁判例 [刑 法] 1(東京地裁八王子支部平19.3.22判決) 酒気を帯びて運転をしていた被告人が,狭く湾曲したカーブを高速度で走り抜けようとしたところ,自車の制御を失って逸走し,付近を散歩していた夫妻のうち,妻をはねて死亡させたという危険運転致死罪等の事例につき,懲役6年の刑を言い渡した例 [刑事訴訟法] 2(大阪地裁平20.3.26決定) 犯罪捜査規範13条に基づき作成されたいわゆる取調べメモの開示を求めた主張関連証拠開示請求に対し,検察官が警察への照会結果に基づき「該当メモは存在しない」との回答を行ったという事案において,同規範13条に該当する取調べメモが存在するか否かについては特段の事情のない限り捜査官側の判断を尊重すべきであるが,捜査官側がそのような回答を行ったという事実は後日行われるであろう取調警察官の証言の信用性評価において考慮されるべきであるとして,弁護人の証拠開示裁定請求が棄却された事例