記事紹介 ◆2007年度大阪地方裁判所第21・26民事部と大阪弁護士会知的財産委員会との協議会 ◆大阪地裁における最近の知財訴訟について/山田知司 ■続・元裁判官の書斎(2) エンサイクロペディストとしての久米邦武(続)/倉田卓次 ◆続・最近の裁判例から見た慰謝料額(下)/後藤 勇 ■現代企業法研究会 企業間提携契約の法的諸問題3 サブ・フランチャイズ契約の制度設計,フランチャイズ契約の対第三者関係 ——企業提携という観点から見た問題(序論)/奈良輝久 ◆ブルドックソース事件最高裁決定と買収防衛策の制度設計に関する実務上の問題点の検討/阪口祐康 判例紹介(全19件) ◆特 報 [行政争訟法] 1(大阪地裁平20.2.14判決) 風俗営業所(ぱちんこ店)の周辺住民に営業所拡張変更承認処分の取消訴訟の原告適格を肯定した事例 ◆速 報 [民 法] 1沖縄集団自決出版差止等訴訟第1審判決(大阪地裁平20.3.28判決) 太平洋戦争後期に沖縄の座間味島及び渡嘉敷島で発生した住民の集団自決に関し,自決命令を発したと記載された守備隊長若しくはその親族が,著者と出版社に対して名誉若しくは敬愛追慕の情を侵害されたとして求めた損害賠償請求及び著書の出版等差止めの請求等がいずれも棄却された事例 ◆最高裁判例 [商 法] 1(最高裁第一小法廷平20.2.28判決) 保険契約に適用される約款に基づく履行期が合意によって延期されたと認められ,保険金請求権の消滅時効の起算点がその翌日となるとされた事例 [刑 法] 2三島女子短大生焼殺事件(最高裁第二小法廷平20.2.29判決) 被害者1名の殺人等の事案につき死刑の量刑が維持された事例 3(最高裁第一小法廷平20.2.18決定) 家庭裁判所から選任された未成年後見人が未成年被後見人所有の財物を横領した場合と刑法244条1項の準用の有無 [刑事訴訟法] 4(最高裁第一小法廷平20.2.20決定) 被殺者2名の強盗殺人等被告事件につき,多数意見では被告人2名を無期懲役に処した第1審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされたが,1名の被告人について,2裁判官による量刑不当との反対意見が付された事例 ◆行政裁判例 [国家補償法] 1(名古屋地裁平18.10.27判決) 1 検察官が,検察庁の庁舎内における被疑者と弁護人との面会接見を検察官執務室で実施した行為,及び,拘置所長が,同面会接見において担当刑務官をして被疑者に腰縄を使用させた行為はいずれも違法でないとした事例 2 検察官が,検察庁の庁舎内における被疑者と弁護人との面会接見に捜査担当検察官及びその立会検察事務官を立ち会わせた行為は違法であるとした事例 [租税法] 2(東京高裁平19.6.28判決) 贈与税につき贈与者の連帯納付義務を定めた相続税法34条4項は憲法29条・84条に違反しない [地方自治法] 3(大阪高裁平19.10.30判決) 1 地方公共団体が談合を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であると認定された事例 2 地方公共団体発注のごみ焼却施設建設工事の入札において,入札業者間に談合が存在したと認定された事例 3 談合による損害賠償額が民事訴訟法248条に基づき契約金額の6%と算定された事例 4(東京高裁平19.2.14判決) 知事等の海外出張旅費の支出について,住民が相当の注意力を持って調査を尽くせば,客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたというべきであるとして,そのころから約2年9ヶ月後にされた監査請求が不適法とされた事例 ◆民・商事裁判例 [民 法] 1プロ野球選手肖像権訴訟(東京地裁平18.8.1判決) プロ野球選手と所属球団との間において,プロ野球ゲームソフト及びプロ野球カードにつき,球団が第三者に対して選手らの氏名及び肖像の使用許諾をする権限を有しないことの確認請求が棄却された事例 2(福岡高裁平19.6.19判決) 1 新聞販売店契約の更新拒絶に正当な理由がないとされた事例 2 新聞社の新聞販売店に対する同契約の更新拒絶や同契約の解約の働きかけが不法行為に当たるとして慰謝料等の支払が命じられた事例 3(大阪地裁平19.11.21判決) クリプトコッカス髄膜炎に起因する視力障害により両眼失明に至った患者につき,診療を担当したメンタルヘルス科及び眼科の各医師が神経内科専門医へ転医させるなどの適切な措置を怠ったため両眼失明という重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性が侵害されたとして,医師の不法行為責任が肯定された事例 4(福岡高裁平19.5.29判決) 手術の際に使用された局所麻酔薬の量が過大であるなどの事情があるのに麻酔高の確認がなされた立証がなく,また,手術後に患者の安静を最重視しなかったことに過失があるとされた事例 5(東京地裁平18.11.22判決) 余命半年程度と予想された大腸癌患者に対し,いわゆるQOLの改善を目的として癌切除術を行ったものの,患者がカテーテル感染症から敗血症に陥り,寝たきりのまま約7か月後に死亡した事案につき,担当医師にカテーテル感染症への対処を怠った過失があり,適切な対処がされていれば,患者が現実の死亡時点になお生存していた高度の蓋然性が認められ,かつ,その間平穏な日常生活に復帰できたとして,慰謝料1200万円等の損害賠償が命じられた事例 [知的財産] 6(知財高裁平20.2.12判決) 1 2以上の請求項を対象とする訂正審判請求における訂正の許否の判断を請求項ごとにすべきものとされた事例 2 訂正審判請求に係る複数の請求項のうちの1つにつき訂正要件及び独立特許要件を認めたにもかかわらず,他の請求項が独立特許要件を欠くことを理由とした審判請求不成立の審決に対する取消訴訟において,訂正要件及び独立特許要件が認められた当該請求項に係る訂正の確定時期について判示した事例 7(知財高裁平19.12.28判決) 2以上の請求項を対象とする訂正審判請求における訂正の許否の判断について説示した事例 ◆刑事裁判例 [刑 法] 1(水戸地裁平20.1.17判決) 前方注視義務違反,減速義務違反を過失とする業務上過失致死被告事件で,犯罪の証明がないとして無罪が言い渡された事例 2(静岡地裁平19.8.6判決) 被告人が被害者に対し,木製の鞘がついたままのくり小刀(ただし,被告人は,鞘が外れて刃が出ているものと誤って認識していた)で,その腹部を強く突き,さらに,鞘の外れた同くり小刀で被害者の顔面等を刺すなどしたが,被害者らに取り押さえられたために,その目的を遂げなかったという事例において,争点となった①殺意の有無,程度の争点について未必的殺意を認定し,②鞘付きのくり小刀で突いた行為は,不能犯でなく殺人の実行行為に当たると認定した事例