柳田国男、折口信夫が築き上げた民俗学は、日ごろ何気なく守っている習俗慣習や民間伝承が過去のたんなる残存ではなく、深い意味を持つことを教えてくれた。本書は、その先達の学問的遺産を正当に継承し、近代以前の社会における共同体のあり方やコミュニケーション、言い伝えなどを通し歴史における庶民の息づかいや生きざまに注目する。氷山の下に隠された祖先の論理と思考を掘り下げ、一元的にはとらえきれぬ文化の重層構造を明らかにした。