同級生の謎めいた言葉に翻弄され、担任教師の不可解な態度に胸を痛める翠は、憂いを抱えて清海の森を訪れる。さわやかな風が渡るここには、心の機微を自然のままに見て取る森の護り人が住んでいる。一連の話を材料にその人が丁寧に織りあげた物語を聞いていると、頭上の黒雲にくっきり切れ目が入ったように感じられた。その向こうには、哀しくなるほど美しい青空が覗いていた……。ミステリ作家・光原百合のデビューを飾った心やさしい物語。著者あとがき=光原百合/解説=石黒達昌