儒家の人為の思想を相対差別の元凶として否定した老子は、無為自然を根本の立場として不争の哲学を説く。荘子はなお徹底して運命随順を志向し、万物斉同を根本思想とした。著者は老荘の微妙な相違を検証しながら「道」と「無」に収斂される壮大な思想体系の全貌を明証する。宇宙の在り方に従って生きんとする老荘思想の根本的意義と、禅や浄土宗などを通して日本人に与えた多大な影響を照射する好著。