本書において著者は、湯川中間子論の根本思想をなす媒介の思想と現代素粒子物理学の根本理念をなすゲージ理論の位相を比較しながら、本邦ゲージ理論の原点に立つ内山龍雄博士の業績などをかえりみつつ、更に哲学者田辺元の絶対媒介の論理に論究し、湯川媒介思想との接点と相違を明らかにしつつ、西田哲学、田辺哲学にきびしい批判の目をむける。『湯川秀樹論』によって日本詩壇の最高賞の一つである歴程賞を受賞した著者が、10年にわたる詩人的構想をあたためて放った注目すべき科学論。