まだテレビ中継がなかった時代――。
戦後初めて日本が参加する夏季オリンピックに派遣された人気アナウンサー和田信賢。
無頼な生き方を貫いた男は、長年の無理がたたって体調を崩していた。
「どうしても、オリンピックを中継したい」
その一心で、男は、大会の舞台ヘルシンキへと向かう。
現地から「日本を鼓舞する」中継を続けるも、次第に目も見えなくなり……。
心と身体の健康こそが最も大切である。
そのうえで、「命を懸けて挑むものが、あなたにはあるのか」と、強烈に問いかけてくる物語です。
様々な仕事において、「数字」が突きつけられる時代ですが、「なぜこの仕事を選んだのか」「何のために働くのか」という”職業人のとしての原点”をもう一度、考えさせられる小説となりました。
スポーツ小説の名手、堂場瞬一が、東京オリンピックに関連したスポーツ小説4冊を3月から6月まで連続刊行する「DOBA2020」プロジェクト第二弾。
ヘルシンキ五輪が、戦争に敗れ、自信を失った日本人に、どれだけ夢と誇りを抱かせてくれたのか――。この物語を読めば、スポーツの力を再発見することができます。