ACCグランプリを受賞した「ファンタ」やTCCグランプリを受賞した「さけるグミ」など、斬新な作風で知られるCMプランナー・井村光明氏。彼はその作風から天才肌だと思われがちだが、実は努力の人である。
考えて考えて考えて、ようやく「面白い」アイデアにたどり着く。果たして彼のメソッドは再現可能なのか?
コピーライター講座の講師でありながら、生徒に「何が面白いのかわからない」と言われて凹み、七転八倒し、「面白いとは何か」の答えにたどり着くまでをつづる。笑えて、ためになって、最後は泣ける、エッセイ風ビジネス書。
「明日プレゼンなのにまだ企画ができていない、明日が締め切りなのにまだ書けていない。やばいやばいやばい。今日まで何もせずに放っておいたわけじゃないのに、そのうち思いつくだろうと思っていたがまだ思いつかない。ここまで粘ってみても思いつかないということは、あと数時間考えても思いつく気がしない。やばいやばいマジやばい。誰か助けてほしい。
すると深夜のオフィスで焦っているところに偶然先輩が通りかかり、苦し紛れに話してみると、「ああ、こういうこと俺にもあったよ」と相談に乗ってくれた! 先輩の言葉の中に、きっとヒントがあるはずだ。一言も聞き漏らすまいと、うんうんとうなづきながら耳を傾ける。
けれども途中から、(あれ? これはただの先輩の昔話というか自慢話で終わってしまうんじゃないか?)と感じ始めると、果たしてその通りになり、「じゃ、頑張って」と去っていく先輩の後姿を見送ることになってしまった。結局時間を無駄にしただけかよ、やばいやばい超やばい。
あー、一生懸命考えているのに、グルグルグルグルおなじ所を回るばかりで一歩も進んでないじゃないか! 新しいことを考えようとしても、気づくとまた同じところをグルグル回っている。もうだめだ、もう一人じゃ抜け出せない。けれど助けてくれる人は誰もいない・・・。
いや、待てよ、そういえば・・・」(「はじめに」より)