「みやび」の全てがここにあるちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは(第106段)在原業平と思しき「ある男」の生涯を描き切った、全125段からなる本邦最古の歌物語。よく歌い、よく生き、よく愛した男の姿からは、平安の世の「みやび」があざやかに浮かび上がり、場面場面で歌われる名歌は、日本的な美のあり方を現代に伝える。「源氏物語」など後世の文学にも多大な影響を与えた作品世界を、恋愛小説の名手がやさしく案内する。
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