孤高の画家、超俗の画家と呼ばれた熊谷守一(岐阜県出身、1880-1977)が亡くなって 30年が経過しました。守一が残した作品には、制作年代にかかわらず見えてくるキーワードがあります。それは「いろ」と「かたち」です。わたしたちの身の回りにありながら、ふだんの生活では特に意識されない事象、風景、動植物たち。これらを見つめ続けることにより創り出された単純かつ絶対的な「かたち」と、持って生まれたまなざしが決定する「いろ」。この二つを駆使し、守一はその時々の景色や花、生き物たちを描いてきました。守一は 「いろ」と「かたち」を見つけるために厳しく、また、いとおしむような優しいまなざしで、それらの題材を見続けました。こうして生まれた作品たちは誰とも比較することの できない、まさしく熊谷守一の世界にほかなりません。