京都に住まいしつつ、世界に発信する氏の作風は、大胆な構図にして精織を極めた描写、また逆るエネルギーが画面を縦横に走っているにもかかわらず、その内面には人々を誘う郷愁に満ち満ちています。今や、氏の制作シーンは、版画の領域を超え、板絵、墨彩、ガラス絵、陶など多彩な素材、技法、テーマに及んで今日に至っています。 木田安彦氏は歌舞伎の様式美に魅入られ、全国各地で所見した名優·花形たちを臨場感あふれるスケッチで捉え、長年の結実として、「歌舞伎抄」(一巻~六巻)をものにされました。 本展では、労作「歌舞伎抄」の素描に加え、氏のライフワークに位置する「三十三間堂」シリーズ、世界遺産、人物画、日本の祭、テラコッタ、不動受陀羅など多くの新作、未発表を含む魅力に富む作品一二〇余件を紹介するものです。 個性味に優れ、不断に新たな境地を拓く氏の感性に触れていただければ幸いです。