コロナ禍で海外に行けない今、海外旅行に行くのと同じ体験ができる方法がある。都内に急増する「チャイニーズ中華」の店に行くことだ。
チャイニーズ中華とは、海を渡って日本に来た中国語圏の人たちが経営し、調理する中華料理店のこと。そこでは本場と変わらない中華料理が味わえる。特長は中国各地の地方料理や外食のトレンドがそのまま日本に持ち込まれていることにある。現地から取り寄せた本格的な調味料や食材を口にしたとき、これまで慣れ親しんだ町中華とは違う異次元の世界が広がっていることに気づくだろう。
本書では、こうした新しい食のシーンを「東京ディープチャイナ」と呼ぶ。背景には、日本に留学し、働く若い中国人が増え、日本人を相手にしなくても経営できる環境が生まれたことがある。1980年代以降に来日した彼らの飲食業の経験の蓄積や成熟から、料理の多様化が進んだことも大きい。実際、客の大半は外国人で、一部を除き、日本人の姿は見かけない。でも、臆することはない。本書を手にすれば、海外でレストランに入るような楽しさが味わえるだろう。