国木田独歩が『武蔵野』を書いてから100年余、武蔵野は変貌した。畑と雑木林とカヤの原の間の細い道、それに沿って農家があり、小さな流れがあり、その間を街道が走り、商家や鍛冶屋が存在していた。もはや、それはない。青春時代を中央線沿線で過ごした著者が、懐かしい友人たちの話に光を当て、移りゆく武蔵野に思いを馳せる。