世界三大映画祭を制した若き巨匠P・T・アンダーソンのすべてが一冊に。
日本劇場未公開の監督デビュー作『ハードエイト』から、ポルノ映画産業の内幕を描き、その名を一躍スター監督の座に押し上げたヒット作『ブギーナイツ』、“21世紀の『市民ケーン』”とも称される『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、トマス・ピンチョン原作の『インヒアレント・ヴァイス』、そして名優ダニエル・デイ=ルイスを再び主演に迎えた最新作『ファントム・スレッド』まで完全網羅。
卓抜のショットで観客を魅了する映画作家ポール・トーマス・アンダーソンの傑作(マスターワークス)を読み解く。
■名場面スチール/描き下ろしイラスト/映画ポスターなど豊富なビジュアル300点&PTAの共同制作者たちのインタビューも収めた豪華決定版。
「カメラがプールに入る瞬間にカットしていると思われているが、そうではないんだ。私たち――グリップのジョーイ・ディアンダと私――は水中マウントを取り付けたカメラを持って、実際にプールに飛び込んでいるんだよ。少し経ってから水面ぎりぎりのところにカメラを出して、ショットを続けるようにしてね」
――ロバート・エルスウィット(撮影監督)、『ブギーナイツ』のプールの場面について
「その場面についてあとでポールに尋ねたとき、私は「あなたは知っていたはずだけど、この場面には終わりがないと感じたわ」と言いました。彼は「君の言うとおり。こうしたことが起こるのを期待していたから、明確な終わりはあえて書かなかったんだ」と答えました。こういうところがポールの天才的なところだと思います」
――ヴィッキー・クリープス(俳優)、『ファントム・スレッド』でのアドリブについて
■序文は、米インディペンデント映画界で大注目のジョシュ&ベニー・サフディ(『グッド・タイム』『アンカット・ダイヤモンド』ほか)。
「私は10代の若者で、フィリップ・シーモア・ホフマンが演じる件の場面(「僕は大バカ(fuckin’ idiot)だ!」)を繰り返し見たのを覚えている。私はビデオでその場面を見て――その場面だけを何度も繰り返して見て――その意味を「理解」しようとしていた。そこには、「ハリウッド・スタイル」で語られた映画のなかに、普遍的な人間性の表現があった。それは深い人生経験を感じさせる表現だった。とても26歳の若者が作った映画とは思えなかった」
――ジョシュ&ベニー・サフディ
■コラム「PTAのムービー・コレクション」では、ロバート・アルトマン、マーティン・スコセッシなど、P・T・アンダーソンに影響を与えた過去作品との関係をひも解く。
■レディオヘッドやハイムほか、