悲劇と喜劇はいつも表裏一体だ。
寂しさが頂点に達したとき、私は、
マンションの前を通る
電車に手をふったりする。
歳を追うごとに私の親切には
コクが出てきている、はずだ。
私は、親友というものをもてない。
母と海を介して
いまだにつながっているのだ。
心の中の感傷のドアを閉じる技だけ
歳をとるほどうまくなる。
わかっているのは、まだまだ
途中なのだということだけなのだ。
有史以来、そして、永遠の謎。
人生の謎を、丸裸にすべく挑んでいたら、
おのれが丸裸になっていた…。
松尾スズキ、渾身のエッセイ。