パリ文壇にデビューし、初めて民間から起用された日本大使館の文化技術顧問として活躍したフランス留学時代。澁澤龍彦、横尾忠則など多くの若者たちが、その教えを乞いに、フランスの著者のもとに集まった。
マルローの東宮御進講を実現させ、筑波大学では「科学・技術と精神世界」という、研究者としてはタブーであった精神世界に踏み込んだ、国際学会を実現させる。
学問的には異端者と評されることもありがながら、自身の信念のもと、霊性の世界に真摯に対峙し続けた著者の、揺れ動く魂の軌跡をあますことなく書き上げる。
執行草舟、絶讃!
壮大な魂の叙事詩。
生涯を深奥世界のミステリー探索に賭した男の、勇気と、哀しみと、驚異に満ちた
二十一世紀の黙示録。
執行草舟(『脱人間論』、『生くる』、『友よ』などの著者)
【第五巻あらすじ】
筑波超え――「コルドバからツクバへ」の知的冒険――から四年目、一九八八年に、フランスの名門、コレージュ・ド・フランスから招かれて「アンドレ・マルローと那智の滝」を講じ、語り部としての役割を果たす。招聘の労をとった日本中世仏教研究の権威、ベルナール・フランク教授の神秘的大往生を後に知って、尊敬を新たにする。
かつて不和だった父に、パリの宿所から初めて感謝の手紙を書く。程なく他界した父は、歿後十七日目――共に九死に一生を得た「三月九日」下町大空襲の記念日――に夢枕に立ち、並んで満開の桜並木を歩く。そこは「カタノ路」だと告げられて探索に赴き、大阪府交野の「峡崖道」を発見する。そこは熊野詣での「奧駆道」につながる民族の大霊流のルートで、まさにこの世とあの世の交点なのであった。
【第五巻の主な登場人物】
ベルナール・フランク(日本中世仏教、コレージュ・ド・フランス日本文明首座)、佛蘭久淳子(同夫人、画家)、衣奈多喜男(朝日新聞顧問、朝日賞二度授賞者)、ベルナール・アントニオス(フランス文化省総局長)、ジュヌヴィエーヴ・ド・ゴール(アントニオス夫人、ド・ゴール将軍姪、パンテオン奉祀ヒロイン)、アルフレッド・ブーレ(マルロー副官、遺言執行人)、福田陸太郎(詩人、東京教育大教授)、昭和天皇・香淳皇后両陛下、岸惠子(女優)、山田智三郎(国立西洋美術館館長)、F・L・ド・ラブーレ(駐日フランス大使)、マルチーヌ・ド・クールセル(アカデミー賞授賞トルストイ研究作家)、ルネ・セルヴォワーズ(アジア巡回大使、『日本、理解の鍵』)、クロード・タンヌリー(作家、『絶対的不可知論者マルロー』)、山本健吉(文芸評論、『いのちとかたち』)、佐久間陽三(マルロー那智滝行撮影朝日新聞専属写真家)、フィリップ+フランソワ・ド・サンシュロン兄弟(『僕らのマルロー』)、奥野平治(交野市郷土史家)